着物の知識

着物の訪問着、振袖、留め袖、色無地、小紋、付け下げの違いは何?

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「着物の種類ってたくさんあるけどどう違うの?」

「結婚式の時に着ていく着物は何がいいの?」

「私、振袖って着ていいの?まずいの?」

そんなことを考えていませんか?

着物には多くの種類があり、それぞれ着ることができるマナーやルールがあります。
それも着物の一つの伝統と言えるでしょう。
でも昨今、そのマナーやルールを知らない女性も多いようです。
自分に合わない着物を着ていると周りから白い目で見られるかもしれませんよ。
着物を着こなすためにも是非、着物の種類については知っておきましょう。
今回は、着物のルールや格、また伝統についてなどその違いについて徹底解説します。

着物の種類によって格や使用用途が違ってくる

着物デビューをしようと思い立っても、なかなか踏み出せない理由のひとつに、どんな着物を選べばいいのかわからないという人は珍しくありません。
素材や柄、季節と、着物はかなり細分化された文化です。
普段使いではある程度自由に着こなしても、個性の範囲ではありますが、TPOによっては、着るべきでは着物もあります。
着物のTPOの判断基準の多くは、着物の格によるものです。こう言うと難しいと感じるかもしれません。
しかし洋装にもフォーマルとカジュアルがあります。着ていく場に合わせたスタイルを選ぶことは、万国共通と言えるでしょう。
着物を始める時には、まず着物の格を覚えて、自分が一番着る機会に合わせた着物を揃える所から始めると良いでしょう。

そもそも着物の格って何?

では着物の格の基準とは、何が決め手になるのでしょうか。
なんとなく礼装のようなきちんとしたものは、高級なものと考える人もいますが、着物には当てはまるとは限りません。
格下の着物であっても素材や製法によって、一般的な礼装よりかなり値が張るものも存在します。
そのため、格を間違えないためには、ルールを覚える必要があります。
着物の格は、大きく分けて礼装と普段着に分けられます。そして格が重視されるのは主に礼装になります。
礼装には、正礼装、準礼装、略礼装とあり、それぞれ、立場や場に合わせて着物を選ぶ必要があります。
礼装において、重要なポイントは紋です。
入れる紋の数で同じ種類の着物でも格が変わるため、気をつけましょう。
紋のデザインは通常、現在の家紋を使いますが、嫁入り道具として着物を誂えた時代の名残もあり、既婚女性は実家の家紋を使うケースがあります。
また、地域によっては女性に伝わる女紋という紋もあります。
紋付の着物を誂える時には、家や地域の風習を確認してから、紋を決めましょう。
女性は、既婚か未婚かも格を合わせた着物選びに必要な判断材料となります。
例えば成人式などの定番である振袖は、独身女性の着物と言われていますが、これは昔、男性からの誘いに答える時に袖を振って、答えた名残です。
そのため既に結婚して操を立てる相手がいる既婚者には、振袖の袖は必要がありません。

略礼装、準礼装、正礼装の違いとは?

礼装と言われるもののうち、3つに分けて、それぞれの格について説明しましょう。

<正礼装>

正礼装は第一礼装とも呼ばれ、最も格式の高い礼装です。洋装では男性はモーニング、女性ではフォーマルワンピースやアフタヌーンドレス、イブニングドレスと同等の格になります。
既婚女性は黒留袖に5つ紋を入れます。
5つ紋は着物の5箇所に紋が入ったもので、背中の中央に一つ、袖の後ろ側に左右一つずつ、両胸に左右一つずつで合計5箇所に紋が入った着物です。
紋の数は多い方が格が高く、5つ紋が最大数になります。

未婚女性が着る本振袖も独身女性の正礼装にあたります。
本振袖は本来、5つ紋を入れていましたが、昨今では華やかな、着物全体に柄が入ったものが多く、省略されることが殆どです。
正礼装は同じく5つ紋を入れる色留袖と喪服もあります。
この二つはどちらも既婚未婚問わず着用できます。色留袖は既婚の女性が主に着るため、振袖を年齢的に着たくないと考える独身で年を重ねた大人の女性が選びやすい正礼装です。
男性の場合は、黒紋付羽織袴が正装となり、やはり5つ紋が最高位となります。
紋の入れ方にも格があり、染め抜き日向紋が一番格上となります。
これは着物の染めを後から行って作る紋です。

このような正礼装は主に冠婚葬祭に出席する時に必要となります。
但し、友人の結婚式などでは、格が高過ぎてしまいます。
結婚式や葬儀であれば近しい親族の着物です。また、本振袖は花嫁の衣装として使われることが多く、通常の振袖は略礼装にあたります。
着物は格が高ければ良いというものではなく、ゲスト側の時には正礼装では格が高過ぎるため、格を下げる必要があります。

<準礼装>

準礼装は正礼装よりひとつ格が落ちる礼装です。
3つ紋付の色留袖や1つ紋の色留袖、訪問着、色無地などがこれにあたります。
この準礼装は冠婚葬祭の中でも身内が着るものです。
主役は正礼装、主役の身内は準礼装、ゲストなど身内以外の方は略礼装が基本です。

<略礼装>

略礼装は1つ紋の色無地、訪問着、江戸小紋です。未婚の場合、振袖も略礼装に入るため、友人の結婚式でも振袖で出席しても構いません。
また注意したいのは、江戸小紋は通常の小紋とは違います。
小紋は洋装で言うならちょっとしたおしゃれ着のワンピースのような格にあたるため、略礼装としては使用できません。

礼装の格について簡単に説明しましたが、着物はこれだけではありません。
また聞きなれない着物の種類もあるでしょう。今度は着物の種類ごとに説明していきます。

付け下げ

続いては付け下げについて解説します。

特徴

付け下げは訪問着によく似た着物です。
訪問着とは柄の入れ方が違い、控えめな柄のデザインが中心となっています。
戦時中に華美な着物が作れないために考案されたとも言われています。
裾と右の袖に柄が入っていて、縫い目では柄は渡りません。
そのため、訪問着よりやや格下とも考えられますが、紋を入れることによって略礼装扱いになります。

使用用途

紋が入っていない付け下げは、少しかしこまった場所に赴く程度のおしゃれ着として着用します。
帯にも格があるので、カジュアルダウンさせるなら、帯も意識して名古屋帯などを選んでみましょう。
1つ紋を入れた付け下げは略礼装なので、結婚式や披露宴でも着用可能です。
その場合は古典柄や箔や刺繍で仕上げたものなど、華やかな袋帯を使用します。

小紋

小紋について解説します。

特徴

小紋は生地全体に柄がある着物です。
格はおしゃれ着や普段着程度で、洋装に例えるなら、ちょっとお出かけに着るワンピースのようなものと考えればいいでしょう。
通常の小紋以外に江戸小紋という小紋もあります。江戸小紋は小紋とは違い、小さな伝統的な柄が細かく入っています。
有名なところでは点描を波のような半円で打つように描いた鮫模様や縦線が入った縞模様があります。
また江戸小紋は、通常の小紋とは違い、単色で柄を入れるため、遠目には色無地のように見えることもあります。
礼装が必要というわけでないのなら、着物初心者が初めて選ぶ着物には小紋が便利です。
おしゃれ着としても普段着としても使え、帯も半幅帯が使えます。
お太鼓を作らない帯結びもできるため、着物にまだ慣れない人も気軽に始められます。

使用用途

通常の小紋、紋のない江戸小紋はおしゃれ着や普段着として。
観劇やパーティーなどにも着ていけます。
紋が入った江戸小紋は略礼装として、結婚式などフォーマルな場での着用もOK。
紋が入ったものは、外出着には向きません。

色無地

続いては色無地になります。

特徴

色無地はその名の通り、無地の着物です。色は黒以外ですが、色によって似合う年齢があります。
あまりに若々しい色をご年配の女性が着たり、逆に渋い落ち着いた色を若い女性が着ると不自然になります。
柄はありませんが、場合によっては地紋が入っているものもあります。

使用用途

色無地はそれだけであれば普段のおしゃれ着のように外出着として使えます。
1つ紋を入れることで略礼装になり、お茶会や冠婚葬祭にも使えます。
弔事の時は若い方も抑え気味の色が良いでしょう。

留め袖

続いては留め袖について解説します。

特徴

留袖は既婚女性の正礼装です。
黒留袖と色留袖があり、5つ紋を入れたものは冠婚葬祭に着用します。
留袖の柄は着物の下部、裾に施された柄が特徴です。
長い振袖を結婚した後に縫い止め、袖を短くした江戸時代の習わしから、既婚の礼装となった着物で結婚式で花嫁花婿の母が着ている黒い着物が、この黒留袖です。
色留袖は単色の地に裾まわりだけに柄が入った着物です。
留袖の由来から、本来既婚者が着るものですが、昨今では振袖を卒業したい大人の女性も着用することがあります。

使用用途

黒留袖は正礼装になるため、結婚式など近しい身内、葬儀の喪主など、冠婚葬祭の中でも重要な立場の時に着用します。
色留袖の場合は入っている紋の数で決まります。5つ紋の色留袖の場合は黒留袖と同等の格になります。
近しいお身内の結婚式にも着られる格です。
3つ紋は準礼装、1つ紋は略礼装となり、正礼装までは必要のない結婚式やお茶会などに着ていく着物です。

振袖

続いては振袖についてになります。

特徴

振袖は未婚女性の礼装。成人式や卒業式で見かける、袖が長い着物です。
和装の花嫁がお色直しに着ているものは本振袖と言われ、袖に綿を入れて厚みを出し、細工も華やかなものを指します。
一般的な振袖は略礼装と同様ですが、花嫁衣装を除けば、未婚の女性が着る着物としては最高位にあたります。
本振袖以外の振袖は袖の長さによって、大振袖、中振袖、小振袖とあります。
今、一般的に式典で見られる振袖は大振袖が中心です。
袖の長さも格に関係しており、長い大振袖が一番格が高いとされています。

使用用途

未婚女性の正装として活躍するのが振袖です。
成人式、卒業式のみならず、結婚式でも着用できます。
卒業式では袴を着る人も多いですが、格式的には振袖も問題ありません。
今では行う人も少なくなりましたが、結婚前の結納でも和装であれば振袖を着用します。

訪問着

続いては訪問着についてになります。

特徴

未婚既婚を問わずに着られる着物です。
柄の入り方は付け下げと似ていますが、訪問着は縫い目で柄が途切れないのが特徴です。
右の肩や胸から袖、裾へかけて柄が続いています。
また紋の数だけでなく、入れ方でも格が変わります。
紋は染め抜き日向紋であれば、1つ紋も3つ紋も準礼装として使えます。
1つ紋を縫っているものと紋なしの訪問着は外出でおしゃれ着を着用する程度の格になります。

使用用途

染め抜き日向紋を入れたものは準礼装となるので、結婚式やお茶会、挨拶回りなど、セミフォーマルな和装を求められる場に活用できます。
紋がないものや縫い付け紋は普段のおしゃれしたい外出などにも使えます。
準礼装として着用する場合は帯や帯締めなども相応の格のものを選びます。

礼装ではない着物

礼装にまつわる着物についてご紹介しましたが、着物には普段着になる着物もあります。
普段の着物は礼装のようにかしこまる必要はありません。
まず、ちょっとしたパーティーに着られるようなおしゃれな外出着としての着物は、1つ紋や紋なしの訪問着や色無地の他に、お召しや織の訪問着があります。
紬も染めた訪問着は外出着として着られます。
紬と聞くと、有名な大島紬は大変手間がかかる製法ということもあり、上質なものは驚くような価格の着物もあります。しかし大島紬は紬のため、格として礼装にはなり得ません。

そしてさらに格が下になるものが普段着物。
紬も普段着になります。他にかすりやウール、木綿の着物も普段着物にあたります。
このようなおしゃれ着や普段着物は帯も丸帯や袋帯のようなフォーマルのものは使いません。
名古屋帯や半幅帯を使用します。

さらに今ではあまり見られなくなりましたが、アンティーク着物の中には銘仙と呼ばれるものなど、存在します。
現代では珍しい柄のため、アンティーク着物でも人気があります。
これはレトロで大正モダンを思わせる大胆で華やかな柄が特徴です。
着物の生地の質は本来の正絹の糸が取れない蚕の繭の中でも出来が悪いものから屑糸を取って作られたのが始まりと言われています。
現在でも秩父など、一部で作られています。

なお、浴衣は木綿ですが、もともと入浴時に使っていた湯帷子が原型と言われており、普段着にする木綿着物とは本来別物です。
日常着物とは違い、素肌に着る着物で、寝間着のようなポジションでした。
しかし近年ではおしゃれ着としての浴衣が増え、お祭りや花火大会、縁日などでも浴衣姿の人々をよく見かけるようになっています。
外で着る時は浴衣用の下着や肌襦袢などを使用します。
また浴衣の中でもきちんとした生地のものは、襦袢で襟を作り、足袋を履くことで夏着物風に着こなすこともできます。
しかしおしゃれに見えても格は普段着と同等のため、観劇やパーティーのような場所には向きません。

着物の格を製法から判断する

礼装から普段の着物まで見てくると、製法も格に影響があることがわかります。
着物には模様や紋の他に、製法が違うと格が変わります。それが「染」と「織」の違いです。
紬が顕著ですが、高価であっても、紬の製法は織にあたります。
対して、正装になる留袖や訪問着、色無地や付け下げは染によって作られます。
素材は主に正絹ですが、現在では化繊のものも登場しています。
正装にあたる着物には織のものはありません。
紬を使った訪問着などもありますが、まだ認知度は低く、一般的には正装が求められる場には選ばない方が良いでしょう。
面白いのは着物とは逆に、帯は織の方が格上となります。
帯は特に金や銀を入れているものはよりフォーマルになるため、着物の格とどんな場に着ていくかを判断してコーディネートが必要となります。

さいごに

まったくの初心者で、身近に着物を着る人がいない場合、着物は敷居が高いものと敬遠されることも多くなりました。
着物の難しさの多くは着物の格とTPOを合わせる知識とも言えるかもしれません。
面倒に感じるかもしれませんが、着物の格は主に正装の場で求められるものです。
洋装だとしても、出かける場所や目的によってフォーマルやセミフォーマル、普段着と使い分けるのはマナーの範疇で、和装だけが特別というわけではありません。
普段の着物は格式にこだわる必要はありませんし、自由に着こなすのも一興です。
しかし自分なりにアレンジして着こなす前に、伝統的なルールを覚えておくと、自分なりの着物を、場所やマナーを踏まえて、より着物の世界を深く楽しめるようになるのではないでしょうか。

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