着物のお手入れ

着物の染み抜きを自宅でする方法とは?どうしたらいいの?

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披露宴やお祝い事、パーティーや法事・仏事などの冠婚葬祭では、着物でお茶を飲んだり食事をしたりする機会が多いものです。気になるのは「着物にこぼしちゃったら…」。
洋服のときはそれほど気になりませんが、着物を着ているときは心配になるもの。ガード加工してある着物や帯なら、お茶をこぼしてしまってもそれほどあわてる必要はないので安心していられますが、ガード加工してある場合もそうでない場合も、まずは大きなハンカチタイプの膝掛けやナプキンで襟元と膝を守りましょう。
それでも飲み物や食べ物がこぼれて着物にしみができてしまったら…?
鉄則は「正絹の着物は自分で処理しない。専門の業者に任せる」です。ここでは、業者に出すほどではない小さなしみ・汚れや、目立たない色柄の着物についたシミのケアについて紹介していきます。

どんな着物でも、早めのケアが肝心

着物の種類に関わらず、食べこぼしや化粧品がついてしまったときなど、すぐに応急処置をしてシミになりにくいケアをすることが重要です。

例1:メイク用品

基本的にやってはいけないことなのですが、筆者は時間の都合で着物を着た後にメイクをすることがあります。
若い頃のことです。着物を着た後にメイクをして、真っ赤な口紅をとった紅筆や、リキッドファンデーションを出したばかりのパフを膝に落としたりしたことがあります。
もちろん襟元や肩にはタオルを掛けてガードしていたのですが、胸から膝にかけてはノーガード。それはもうべったりと真っ赤な口紅やたっぷりだしたリキッドファンデーションが着物の膝のあたりに付きました。
すぐに手近にあったティッシュでこそぐようにファンデーションを取りました。こういう時に、してはいけないのが、「拭く」という動作。拭き方が悪いと汚れが広がり、繊維の奥へ染み込ませてしまうことになります。クリアファイルくらいの薄いプラスチック板を使うのもいいです。肝心なのは着物に染み込まないように「汚れを掬い取る」ことです。

例2:食事中の食べこぼし

襟元やひざにナプキンをかけていても、なぜか隙間にお料理のソースやサラダのドレッシングが垂れている時があります。そんな時も、すぐに応急処置をしましょう。
まずは清潔なかわいたハンカチやタオルに汚れを吸わせます。絶対にこすってはいけません。ここでこすってしまうと、メイク用品と同じように、繊維の奥に汚れを自分の手で染み込ませることになってしまいます。
次に、水で濡らして固く絞ったハンカチやタオルで汚れの部分だけをつまむようにもみ、汚れを写し取ります。できれば白いハンカチやタオルを使うと汚れを写し取れたかがわかります。この時に、濡れる面積を最小限に抑える努力をしましょう。
最後に、汚れの部分をかわいたハンカチやタオルでたたき、水分をできるだけ取ります。

自宅で染み抜きできる着物は?素材によって方法は違うの?

素材によって自宅でケアしやすい、難しいなど多少あります。
洗える着物は大きな面積の汚れでも自宅で比較的簡単にケアできます。
浴衣など綿の着物は、自宅で染み抜きも洗濯もできます。ただし、綿はしわになりやすいので、あとで手間が増えないように、ケアのポイントを守りましょう。
正絹の着物は色や柄によって5円玉大~500円玉大くらいなら自宅でケアできます。ものによっては、専門業者に頼むのがベストな場合もあります。

ポリエステルの着物

いわゆる「洗える着物」は、ポリエステル100%なので、シミ汚れの部分を洗濯洗剤でつまみ洗いしてから洗濯機で洗うことができます。普通のアルカリ性の洗濯洗剤も使えますが、色あせが心配な場合はおしゃれ着用の中性洗剤をお勧めします。
手順は、まず、汚れが付いた箇所が表に来るように袖たたみして大きな洗濯ネットに入れます。着物専用の選択ネットでなくてもOK。60センチ×50センチくらいあれば入ります。弱水流や手洗いコース・ドライコースなどで洗います。脱水が終わったらすぐに干しましょう。ポリエステルはしわになりにくいので、着物用のハンガーにかけて干せば、アイロンかけも不要です。脱水後に放置すると余計な折り目やしわが残り、アイロンかけの手間が増えます。要注意です。

浴衣などの綿の着物

ポリエステルの着物と同様に、汚れの付いた面を表にして袖たたみにし、大きな洗濯ネットに入れます。綿はポリエステルよりも汚れがしみ込みやすいので、色あせ防止におしゃれ着用の中性洗剤に30分ほど浸け置きをしてからドライコースか手洗いコースで洗いましょう。すすぎは念入りに行います。浴衣は、洗濯機用のノリを使ってから30秒ほど脱水します。物干し竿か着物用ハンガーに掛けて、縫い目を引っ張って形をととのえ、皺は両手で挟んでたたきながら伸ばします。屋外ならそのまま、室内なら着物の下にバスマットなどを敷いて、床が濡れないようにします。
糊付けして水滴が垂れるくらいの脱水加減で皺を伸ばして干せば、アイロンの手間が省けます。ポリエステルの着物よりも皺になりやすいので、脱水後にすぐ干すのがコツです。

着物の染み抜きはシミによって違うの?

細かい柄が全体的に散らしてある着物は、シミができても目立ちにくいものです。ですので、自宅で染み抜きをしてみてもよさそうな着物といえます。反対に、無地の着物やとび柄小紋、付け下げなどの柄の少ない着物は、シミがわかりやすいきものです。袖口や袂、裾はあまり目立ちませんが、上前のひざ上、襟元などは目につきやすい部分です。初めにお伝えしたように、基本的に「シミが付いたら専門家へ」が鉄則ですので、色無地や無地場の多い着物の、目立つ部分の自宅での染み抜きはあまりお勧めできません。自分でやりたい場合は、自己責任でチャレンジしてくださいね。
自宅での染み抜きは、ある程度まではきれいになりますが、完全にシミが落ちるまで処理をすると、着物の繊維を痛めると同時に、シミのない部分まで汚れが広がってしまうことが多々あります。目標を「シミを落とす」ことではなく、「シミを目立たなくする」位を念頭に置いて作業しましょう。

水溶性の染み抜き方法

水溶性のしみは、コーヒーやお茶などの飲み物や果汁、汗、意外なところでケチャップ、マヨネーズなどです。

用意するもの

洗いざらしの清潔なタオル、ガーゼまたは手ぬぐい 各数枚
※できれば、柔軟剤を使っていないもの。水またはぬるま湯、ドライヤーまたはアイロン

染み抜きの手順

シミのついたところの裏にタオルを敷きます。
水かぬるま湯に浸して絞ったガーゼまたは手ぬぐいでシミを叩きます。その際、輪染みが広がらないように注意します。
ガーゼのきれいな面を出し、繰り返し叩きます。生地が傷むのでこすってはいけません。
汚れがある程度まできれいに落とせたら、きれいなタオルでぬれた部分を挟んでたたき水分を取ります。
最後に、ドライヤーか当て布をしたアイロンで、シミの外側から少しずつ乾かします。

染み抜きの注意点

濡らして絞ったガーゼは、片手で握ったときに水滴が流れるようでは濡らしすぎです。また、固く絞りすぎたガーゼを使うと、汚れは浮かずに生地が傷むだけなので注意してくださいね。
こするのは厳禁です。

油性の染み抜き方法

油性のシミは、文字通り油分を含んでいるものです。口紅、ファンデーションなどのメイク用品、ドレッシングやカレー、肉料理のソースなどです。

用意するもの

リグロンやベンジンなどの石油系の染み抜き用溶剤(薬局で購入できます)
洗いざらしの清潔なタオル、ガーゼハンカチ 各数枚 ※できれば、柔軟剤を使っていないもの。ドライヤーまたはアイロン

染み抜きの手順

水性の染み抜きと同様に、シミのついたところの裏にタオルを敷きます。
ガーゼハンカチにたっぷりとリグロンやベンジンを含ませて、汚れを裏側のタオルに貫通させるように叩きます。
裏のタオルも溶剤を含ませるガーゼハンカチも何度か取り替えながら、シミが薄くなるまで繰り返します。
ベンジンやリグロン自体で輪染みになることがあるので、シミの外側をたたいで輪染みをぼかします。
最後にドライヤーか当て布をしたアイロンで乾かします。

染み抜きの注意点

水溶性の染み抜きと同様に、こするのは厳禁です。また、石油系の溶剤は引火性もあるので、火の気に注意してください。火器の近くでは使わないこと。溶剤に書いてある使用上の注意をよく読んで作業を行いましょう。

業者に着物の染み抜きをお願いすると料金はいくらくらいかかる?

何度も鉄則は「正絹の着物は自分で処理しない。専門の業者に任せる」と伝えてきましたが、どのくらいの費用がかかるのでしょう?
実情は、「お店による」です。
リーズナブルなお店で1か所500円から、高めと感じるお店で3500円くらいでしょうか。
着物の丸洗い(京洗い・生き洗い・ドライクリーニング みな同じです)は平均で8000円~12000円くらいが相場ですので、油性のシミが3か所以上ある場合には、高めのお店で染み抜きをするよりも丸洗いに出したほうがお得なります。
筆者が懇意にしている呉服屋さんは、染み抜き1か所1600円くらいでした。丸洗いは別のお店を利用していますが、会員価格で2000円から3000円です。他店でも丸洗いは通常10000円前後、キャンペーン価格ならおひとり3枚まで1枚3000円というのを多くみます。染み抜きよりも丸洗いのほうが、全体が痛むので、回数を着ていない着物のケアは染み抜きがおすすめです。
水溶性のシミに「汗」がありますが、染み抜きを扱うお偽では大抵「汗抜き」というメニューを設けています。相場は片側1000円~2500円くらい。これもお店によります。

さいごに

染み抜きの鉄則は「正絹の着物は自分で処理しない。専門の業者に任せる」です。
まずは応急処置、そのあとの自宅での染み抜きは、注意点を守りながら自己責任で行ってくださいね。

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