「着物ってアイロンがけしてもいいの?」
「着物のアイロンのかけ方ってどうするの?」
「着物のアイロンかけでスチームを使用してもいいの?」
なんてあなたは思ってはいませんか?
着物にしわができてしまった時って悩みますよね。
クリーニングに出すのも気が引けるし、かといってアイロンをかけるのも不安。
でもご安心ください。
結論から言うと、いくつか気を付ける点はありますが、アイロンを使用することは可能です。
今回はそのアイロンをかけるコツなどについて解説します。
目次
着物はアイロンがけをしてもいいの?
着物を着るためにタンスから引っ張り出してみて思わぬシワに驚いたことはありませんか?
しっかり畳んで収納しても少しヨレていただけでひどい畳みシワになっていることがあります。
着物と一口に言っても正絹、木綿、ポリエステルとその素材はさまざまですが基本的に着物にアイロンはかけられます。
ただし着物の素材によってアイロンのかけ方に違いがありますので、アイロンをかけたい着物の素材をしっかりと確認することが大切なポイントとなります。
着物にしわができたときにまず試すことはある?
着物にしわができたとき、まず試してほしいのが着物ハンガーにかけることです。
着物を着用したことで生じるしわであれば着物ハンガーに数日かけておくことで気にならない程度までしわを伸ばすことができます。
帯のしわも同様で着用後にはハンガーに吊るしておきましょう。
ここでひとつ注意していただきたいのが留袖のような二重になっている着物を長期間吊るした状態にしておかないことです。
留袖や色留袖の一部は比翼仕立てと言う表地の下に白い布でもう一枚着物がある仕立てになっていることが多く、
長時間ハンガーに吊るすことで中の白い部分が落ちてしまい次に着用した時に裾から白い着物がはみ出してしまいうまく着付けられない状態になることが稀に起きるからです。
留袖や色留袖は最長1日程度としてハンガーから下ろすようにしてください。
⇒着物(振袖)の正しいたたみ方とは?初心者向けに動画と画像で解説
正絹の着物のアイロンがけの手順は?
正絹の着物のアイロンがけでは必ずあて布を使用しましょう。
あて布の色がうつらないように白い布がいいですね。
アイロンの温度は中温、絹の設定がある場合は絹の設定温度が望ましいです。
しわの上にあて布を置き、あて布の上から霧吹きで水を吹きます。
絹は水で縮みやすい特性があるため着物に直接水をかけないよう、別の場所であて布に水を吹ってから着物のしわの上に置いても良いです。
設定温度のアイロンを強く押し付けず、小刻みに動かしながら布の繊維の目に沿って動かしていきましょう。
正絹の布目は縦糸と横糸が交差されているので、縦方向、横方向と90度で交わるような形でアイロンをかけるとキレイに仕上がります。
しわがキレイに伸びたらアイロンの熱が冷めるまで着物ハンガーにかけておき、完全に冷めた状態で収納しましょう。
正絹の着物のアイロンがけのコツとは?
正絹の着物は購入時にもそれなりに値が張るものだけに、アイロンがけには細心の注意を払いましょう。
アイロンをかける順序としては着物を着用した時に目立たない胴回りや着用した時に下側になる右見頃から始め、布地に異常がないことを確かめてから裾、袖、見頃と進み、最後に衿を仕上げます。
裾のアイロンをかけた時点で屏風たたみにしていくとアイロン後にしわがつきにくくなります。
刺繍や柄の上にしわがある場合はまず裏側からアイロンを当てるようにしてください。
ごく稀に生地が変色したりする場合もありますので、アイロンをかける時は帯の下になる部分など、着用時に目立たない場所から当ててみましょう。
木綿の着物のアイロンがけのコツとは?
木綿の着物のアイロンがけは正絹のアイロンがけと違い、しっかりと力を入れてかけていきます。
木綿のハンカチなどにアイロンをかけるのと同じ感覚で行っていただいて構いません。
ただし、木綿の着物にも布目がありますので正絹の着物と同じく縦、横90度で布目を確認しながらアイロンをかけていきましょう。
アイロンの温度は高温または綿の設定で、霧吹きもしくはスチームでかけるとキレイに仕上がります。
浴衣などでラメが入っているようなものは裏側からアイロンをかけるかあて布を使用しましょう。
その他の着物のアイロンがけのコツとは?
ウールやポリエステル素材の着物にもアイロンをかけることができます。
必ずアイロンの設定温度を素材に合わせることと、霧吹き、あて布は必須です。
特にポリエステルの着物はしわが頑固な場合があるため、生地をアイロンを持っていない方の手で軽く引っ張りながらかけるとキレイに仕上がります。
こちらも必ず布目に沿ってアイロンをかけましょう。
刺繍や金箔などの特殊装飾はどうしたらいい?
刺繍や金箔など、基本的に布の表面に豪華な装飾がある場合はその場所を避けてアイロンをかけましょう。
刺繍はその立体的な形をアイロンで潰してしまう恐れがありますし、金箔は金色が変色してくすんでしまう恐れがあるためです。
どうしてもその部分のしわを取りたいなら裏側から低温でそっとなでる程度にしましょう。
この場合、割り切って着物クリーニング専門店に出すことも検討して良いかと思います。
着物にアイロンをかける時の注意点
<あて布は必須>
どのような素材でもあて布は必須です。
あて布なしでアイロンをかけてしまうと思わぬテカりが出てしまう場合がありますので注意してください。
<衿のアイロンがけ>
衿の部分は布地が二重になっているためアイロンを滑らせてしまうと更にしわを増やしてしまいかねません。
衿のアイロンがけは少しずつ、軽く押し当てる程度に動かしましょう。
<着物のきせ>
着物には「きせ」と言って表面の布地を余分に外側に出し、表から裏地が見えないよう工夫して仕立てられています。
この余分を伸ばしてしまわないよう注意しましょう。
表と裏の布地の長さが違うと感じた時は表地を長く出すようにするとうまくいきます。
<スチームは基本、使わない>
木綿の着物以外でのスチームは厳禁です。
特に正絹はスチームなどの高温でアイロンをかけると布地が縮んでしまったり布地自体が傷む可能性があるため禁忌です。
しわが強い場合はドライ設定+霧吹きで行いましょう。
<染みを見つけたら>
アイロンをかけている途中で染みを見つける場合があります。
染みの上からアイロンをかけてしまうと染みが取れなくなる場合がありますので、染みの部分へのアイロンがけは避けましょう。
また、染みを見つけたらすぐにしみ抜き専門店に出すことをおすすめします。
<高価な着物に強いしわがある時は>
自分でなんとかしようとせず、割り切って専門店にお願いするのも一つの手段です。
無理をして大切な着物を破損してしまわないよう時には決断も大切です。
着物にしわができない保管の仕方とは
1)着物の収納時
着物にしわができやすいのは意外にも着物の収納時です。
少しだけ引き出しを開けて押し込むように収納してしまうと下にある着物がズレてしわの原因になってしまうのです。
逆に着物を出すときも下の着物を触ってしまわないよう、着物の出し入れは面倒でも引き出しをめいいっぱい出した状態で一枚ずつ重ねていきましょう。
また、たとう紙に一枚ずつ収納しておくのも収納時のしわ対策には有効です。
2)着物を着たら
着物を着用したらどんなに疲れていてもすぐに着物ハンガーにかけましょう。
帯や帯締め、帯揚げも同様にハンガーにかけることである程度のしわが取れます。
着物についた汗を飛ばす意味合いも含め、1日程度は陰干しして収納するといいでしょう。
また、着付け師さんによっては衿を糸で縫う方もいます。
衿が縫ってある場合は糸を切り、すべて伸ばした状態にして収納するようにしましょう。
3)余裕があるなら虫干しを
着物が生活の一部だった頃は年に3回程度の虫干しを行っていたそうですが、これを年に1回だけでいいので梅雨明けに行いましょう。
その際に着物ハンガーに半日ほどかけておくことで思わぬたたみじわを取ることもできますし、仮にしわができていたとしても軽症で済みますよね?
何年もタンスの中で寝かせないよう、高価なものだからこそしっかりとケアしてあげたいですね。
着物にアイロンをかけないでしわを伸ばす方法はある?
着物のしわを取るアイロン以外の方法に着物のしわ取りスプレーがあります。
絹・ウール・綿・麻など幅広い素材に使用できるスプレーですが絞りやお召、ちりめんなど伸縮する布地には使用できません。
使い方も簡単で、布地から約20センチ離してスプレーし、乾かすだけです。
ただし、
・布地に直接スプレーしなくてはいけない
・成分に界面活性剤、アルコールが含まれる
以上のことから変色や縮みの恐れもあります。
どうしても使用しなければいけない場合は目立たない部位で異常がないかをしっかりと確かめてから使用するようにしましょう。
あくまでも応急処置として考え、しわ取りスプレーを使用した後は専門店でのクリーニングを心がけましょう。
さいごに
最近は着物を着る機会も激減し「着物を着たらクリーニング」という風潮が高まっているように感じます。
クリーニングをすれば一見キレイになったかのように感じますが、着物の布地にとっては確実にダメージを受けています。
着物のしわを自分で取ることができれば着物をクリーニングに出す必要もなく、染みや汚れさえ付かなければクリーニングの間隔が数回着用する分だけあいてきます。
これだけでも布地へのダメージを軽減させることができ、大切な着物を長期にわたり保存することができますのでぜひアイロンがけにチャレンジしてみてください。